多くの壁にぶち当たった1年

どんなルーキーイヤーでしたか？

苦しかったですね。「1年目からチームに貢献してタイトルを獲得する」と心に決めてプロ入りしたのにそれができなくて。自分ができないこともあり多くの壁にぶち当たりました。

GKはなかなかチャンスが巡ってこないポジションですが、1年目からスタメンを狙っていたんですね。

GKはなかなか出られない、ということは言われ慣れてます。でも自分はそれをぶち破りたいという気持ちが強くて。絶対的な存在の選手がいるからこそ燃えるし、本気でソンさん（チョン・ソンリョン選手）からポジションを奪ってやろうという気持ちでやってました。

プロのスタートはフロンターレと決めていた、とインタビューで話されていますね。

小さい頃からフロンターレでプロになると言いふらしてましたね。そうすることで自分に逃げ道を与えないというか。だからユースからトップに上がれなかった時はとても苦しかったです。大学の4年間、ずっとフロンターレの練習着で練習しながら「『フロンターレのアカデミー出身』という肩書が付いている以上は今もこのクラブの一員だ」という思いでやっていました。

大学サッカー部では、選手たちがいろいろなチームのユニフォームを着て練習していますよね。

よく各クラブのユースチーム出身者同士でユニフォーム交換したりもするんですよ。でも自分は全くする気がなかったですね。フロンターレのユニを着ることに誇りを持っていましたし、他のクラブのユニを着るのは自分のプライドが許さないという気持ちでした。

フロンターレに戻ることが決まった時は嬉しかったでしょうね。

喜びよりもほっとしました。4年間フロンターレに戻るためにやっていたから、そこに間違いはなかった、と。

GKというポジションの面白さはどこにありますか？

面白さ…う～ん、僕はもし子どもができてもキーパーはやらせないですよ（笑）。子どもの頃はチームのなかで1人だけユニフォームの色が違うとか、1人だけ泥だらけになるとか…やっぱり孤独感があるポジションで。ほかにも壁が多くて、正直同じ経験はしてほしくないなと思いますね。

苦しさが多いポジションですか？

ミスをしちゃいけない、でも人間だから絶対にミスはある。それをどこまで最小限に抑えていけるかを追求していくポジションなんです。シュートを止めるって簡単じゃないんですよ。あの大きいゴールの中でちっちゃいボールを止めるんですよ？確率でいうとかなり低くなりますよね（笑）。だけどそのために何回も何百回も飛ぶ。でも結果的に止められなかった時の悔しさは凄まじいんです。

その苦しいポジションを続けてきたのはなぜでしょう？

自分にしかできないと思っているからです。そのために練習して、そのためにいろんな人に支えられてきた。自分はGKの役割を果たす人間だと思ってて、逃げる選択肢はないです。
GKはフィールドプレーヤーと違って唯一替えがきかないポジション。ほかの選手に突然GKをやらせても、手で止められる人ってほとんどいないんです。だからこそ自分しかないという思いでやれるんです。

面白さというよりやりがいが大きいんですね。

苦しさもあったけど、今は誇りを持っています。最後を守るのはGKで、そのプレーで何万人もの人を笑顔にできるんですよね。いつもスタンドから試合を見ながら、チームスタッフを含めてみんなを笑顔にできるポジションだな、と感じてます。自分も1日も早く等々力のピッチに立って、相手のシュートを止めまくって、関わっている全ての方を笑顔にしていくつもりです。