川崎フロンターレ FW11 小林 悠 川崎フロンターレ FW11 小林 悠

FW11 小林 悠

パスをくれる仲間と信じてくれるサポーターがいる

1年1年が勝負という感覚

今季はプロ入りして14年目のシーズンでした。
あっという間でしたね。プロになった当時はここまでやれると思っていなかった。その頃はまだ30歳くらいまで現役でやれたら充分、というイメージだったので、まさか36歳までやれているとは、って感じです。
ここまで長く第一線でプレーできている理由はなんだと思いますか?
どうなんでしょうね。昔のJリーガーって華やかな生活をしてるイメージじゃないですか(笑)。でも今の選手はお酒も飲まないし栄養管理もしっかりして、メディカルも発達して。選手寿命が伸びた、という側面はあると思います。もちろん僕個人もかなり努力していますよ。食べ物や睡眠にも細かく気を遣っています。
長く現役を続けるサッカー選手が多くなった今では「まだ14年」という意識ですか?
いやいやそんなことはないです(笑)。憲剛さん(中村憲剛さん)とか、40歳まで現役ってすごいなって思いますよ。この年齢になるとそのすごさを改めて感じますね。
僕は1年1年が勝負という感覚。あと何年できるかな〜って。朝起きて「今日はアキレス腱が痛いな」「もう嫌だ〜」って思いながら朝ごはん食べて、クラブハウスに来て、お風呂で温まったらやっと楽になってきて、そして練習。32歳くらいから身体が変わってきたのを感じますね。やっぱり酷使しちゃってますから。
これまでの14年間で、ご自身が印象に残っているゴールを挙げていただけますか。
リーグ戦でいえば、2017年のホーム仙台戦かな(10月14日開催、1人退場者を出しながらも終盤に小林選手が2ゴールを決めて逆転勝利。その年のリーグ初優勝へ向け大きな勝利となった)。等々力の雰囲気がすごかったんですよ。サポーターからの「いける!」っていう空気を、ピッチにいて1番感じた試合でした。「打てー!!」っていうみんなの思いが僕に乗っかるような感覚があって。いつもは打たないような場所だったのに、迷いなく足を振っていけた。あれは間違いなく等々力のサポーターのみんなが獲らせてくれたゴールでしたね。
そういう力って本当にあるんですね。
ありますあります!もちろん僕も「残りの時間でヒーローになる!」って、自分の集中力をビーン!って高めているんですけど、それにサポーターが一緒に乗っかってきてくれる感覚。僕に期待してくれている思いを感じて、それを力に変えていけるんです。
ストライカーの小林選手にとってゴールを獲ることはどんな意味を持つんでしょう。
「生きてる!」って感じるんです、本当に。ゴールを獲ってない時は、自分がサッカー選手として「死んでるな〜」って思いますもん。自分のゴールでチームを勝たせたいんです。そう思ってるから、パスを出してくれる仲間がいるし、信じてくれるサポーターもいるんだと思います。
14年間のうち、8シーズンで2桁ゴールを挙げています。誇れる数字ですよね。
フロンターレには素晴らしいパサーがいる。そこに尽きます。もちろん自分の動き出しがあってこそだとは思ってますけど、どれだけ動きが良くても良いパスが来ないと点は取れないですから。憲剛さんや(大島)僚太の他にも、素晴らしいパスをくれる中盤やDFの選手たち、感謝する人を数え出しだらキリがない。ここまでのゴールは全てフロンターレのみんなのおかげです。
ここからの小林悠についてどう考えていますか。
うまく伝えられるか分からないんですけど…。今、なかなか試合に絡めなくなってきているのは自分自身で分かっています。ただ、そういう状況でも「11番」の背番号のついたユニフォームを着てくれているサポーターを見ると、「ああ、僕はまだやらなきゃな」と思わせてもらえるんです。
僕は「サポーター」と「妻」と「子供」、その3つの柱で支えられています。その人たちにかっこいいところを見せたいって、ずっとそれだけでやっているんです。ここから僕に何ができるかは分からないけど、変わらずその人たちのためだけにプレーし続けていきたいです。僕1人だったらもう辞めてますよ(笑)。ゴールを獲って「生きてる!」って感じるのも、僕の苦労してきたことや僕のダメなところを知ってくれているサポーターや家族がいるからこそですから。
プロフィール

【小林 悠】1987年9月23日生まれ 東京都町田市出身 クラブ公式プロフィール
2010年、拓殖大学から川崎フロンターレに入団すると、ゴールゲッターとして頭角を現し得点を量産。特にチームの苦しい場面で価値あるゴールを決める存在として、サポーターからの信頼が厚い。プロ14年目も試合終盤の劇的ゴールでチームを救う活躍を続けている。

フリーアナウンサー 高木聖佳’s eye フリーアナウンサー 高木聖佳’s eye

小林選手は10年ほど前、選手として苦しんでいた時に「絶対に人のせいにしない」と決めたそうです。そういうメンタルを持つことで大きく成長していきました。そして出場機会が減ってしまった今も同じく、矢印は常に自分に向いています。
「『なんでだよ!』って悔しくてイライラすることもあります。でも、寝て、朝起きたら『いや、お前が足りてないからだろ』って自分で自分に思って、そして練習に行く。その繰り返しです」と話してくれました。
サポーターのみなさんと同じように、私も14年間の小林選手の最高の瞬間も、もがいていた時間も見てきました。その全ての姿がいつも何かを伝えてくれる選手でした。だからこそ出場機会が減った今もなお、私を含めた多くのサポーターにとって、フロンターレのエースストライカーは小林悠選手であり続けているのではないでしょうか。まだまだここからの小林選手を見続けていきたいです。