川崎フロンターレ 伊藤 達哉選手 川崎フロンターレ 伊藤 達哉選手

FW17 伊藤 達哉

若いうちのチャレンジが、自分を強くした

高校3年での渡独は悩まず即決だった

フロンターレに加入されて半年、試合ごとに存在感を高めていらっしゃいます。
フロンターレでは(これまでの左ではなく)右サイドでプレーすることが多くて、左右のサイドの違いを常に感じながらプレーしています。右だと身体の向きとか目線が真逆になって戸惑うこともあるんです。左だったら頭で考えなくても全部自然な自分の動きができるけど、右だと1回頭で考えて行動に移す。で、その頭で考えてる時に、あれ?これどうだっけ?とかなっちゃったり。ただ選手としてこの経験は大きなプラスだと感じています。
伊藤選手は大きい選手が目の前にいても、ドリブルでするするっと運んでしまうイメージがあります。
1対1には自信があります。ただそこも左だと絶対的な自信がありますけど、今は右サイドでの自分のドリブルを模索している段階です。両サイドできる選手は貴重だし、自分が目標とする選手のレベルまでいくには必要なことだと思って取り組んでるところです。
加入時のインタビューで「ヨーロッパリーグでの経験がJリーグでどう生かされると思いますか?」という質問に、「実際にJリーグでプレーしたときに、自分がヨーロッパで身に付けてきたものが分かるかもしれない」と答えられてました。
改めて感じるのは、やっぱりフィジカルなところかな。向こうの選手は身長も大きいですし、かつスピードもパワーもあったので、自分もそこに対応できるトレーニングに取り組んできました。今も続けているんですけど、それが日本でのアドバンテージになっていると感じます。そこはヨーロッパに行って良かったことの1つですね。
高校卒業前にドイツに行かれた決断はすごいなと。
確かに自分の話じゃなくて、今誰かが高校3年生の夏にひとりでヨーロッパにサッカーをしに行く、と聞いたら俺もすごいなって思いますね。でも当時の自分は悩まず即決でした。両親にも事後報告で「俺行くわ」みたいな。親も「ああ、分かった」って感じだったから、大きい決断をした感覚もなくて。そこから10年間ずっとヨーロッパ。今考えたら結構大きな人生の決断だったとは思いますけど。
今もし若い選手が、海外にトライするか悩んでいたら後押ししますか?
若いうちに行くことのメリットは、最初のチームで失敗してもまだ別のチームでチャレンジする時間があることですよね。ミスしても次の時間がある。でも日本でレベルアップしてから行くのが、もしかしたら理想的なルートかもしれないし。自分も、もし先にJリーグを経験してたらどうだったかとも思うし、結局はなにが正解かは誰にも分からないですよ。
初めての日本のクラブですが、日本語で話せる気楽さはありました?
自分はもうドイツ語を喋れるようになってたし、英語もまあまあ喋れるからコミュニケーションはそんなに変わらなくて。ただフロンターレでは選手同士が日本のお笑いの感じで、掛け合いとかボケとツッコミみたいなのことをしてるので、なんか面白いな~と思いながら見てます。
見てるだけ?(笑)そこに参加してボケたりはしないんですね。
ないです(笑)見てる。
チームでは誰と仲がいいんですか?
うーん、チームの中に「仲の良いグループ」ってあるじゃないですか?でも「タツヤはどこでもいるよね」ってこの前、際くん(ファンウェルメスケルケン際選手)に言われました。みんなと仲いいよねって。確かにこの人とは喋んないって人もいないですし、いろんなグループにいるかも。
そういえば、マルシーニョ選手について、他の選手はみんな「マルちゃん」って呼ぶのに、伊藤選手だけ「マルシーニョさん」って呼ぶねって記者の間で話題になってました。
あ、それですね。いや普通に年上だからで、深い理由もなくて。チームメイトからも「なにそれやめて」みたいに言われるんです。「誰もそんな風に呼んでないから!」とか。いやそこは関係ないし…自分にとって先輩だからさん付けです。ジェジエウ選手も「ジェジさん」。
ひとつでも年上だと「さん付け」?
くん付けの先輩もいますよ。自分の中にルールがあるわけじゃなくて、なんとなく。だけどみんなそこに引っかかってるみたい。「え、(マルちゃんを)さん付けで呼んでる…」って口では言わなくても、そういう雰囲気はめっちゃ感じてました。俺からしたら、いや普通に年上の人に「さん」を付けてるだけでなぜそんなに?って感じです(笑)。
最後になりましたが、本日がお誕生日です(※取材日6/26)。おめでとうございます!28歳の目標などありますか?
ありがとうございます。サッカー選手として1番良いとされる年齢に入ってきたのかな、と。ここからは自分がチームを引っ張る存在になりたいですね。自分がチームを勝たせたいし、勝たせるだけじゃなくて、フロンターレでプレーする以上は優勝させなきゃいけない。そういう存在になっていくのが目標です。これまでもサッカーに集中してこれましたけど、ここからは結果を出したい、形にして行きたいという思いがあります。
プロフィール

【伊藤達哉】1997年6月26日生まれ 東京都台東区出身 クラブ公式プロフィール
柏レイソルの育成組織で育ち、高校3年生の夏、ドイツ・ハンブルガーSVの要望を受け渡独。以降10年間、ヨーロッパでのプレーを続け、2025年、初のJリーグでのプレーとなる川崎フロンターレへの加入が発表された。小柄ながらその存在感はピッチ上で目を引き、相手を翻弄するそのドリブルは一見の価値あり。これからのフロンターレの中心選手として大きな期待が寄せられている。

フリーアナウンサー 高木聖佳’s eye フリーアナウンサー 高木聖佳’s eye

初めての伊藤選手へのインタビューでしたが「伊藤選手、どんな人だった?」と聞かれてもうまく言葉にできないです(笑)。
インタビュー前、あるライターさんにアドバイスを伺ったところ『「タツヤはタツヤ」ってチームメイトに表現されてるよ』と教えてもらったのですが、はい、ぴったり。めちゃくちゃおしゃべりというわけでもないけど、質問にしっかり答えてくれて、理路整然としてとてもクレバー。一方、ご本人の言う通り「ボケる」とかはないのですが、こちらがニヤニヤしちゃうおもしろい空気が生まれる話もしてくれる。
好きなテレビ番組は、「ケンコバのほろ酔いビジホ泊」。タレントのケンドーコバヤシさんが地方の居酒屋で1人で飲んで楽しんでいる姿を「あれ楽しそう…やってみたい」と思いながらずっと見ているそうで、奥様からは「おじさんみたい」と言われるそうです。その姿もあまり想像できない(笑)。ご本人は「普通、すごく普通のひと」と自己評価されてましたが、その掴みどころのなさに魅せられ、さらに深掘りしたいという思いが強くなりました。これからもっと知って、もっとお伝えしていきたいです!

⾼⽊聖佳
⾼⽊聖佳(X @takagikiyoka