DF5 佐々木 旭
目標は言葉にして言い続ける
キャプテンマークを巻くと気持ちが全然違います
- プロ4年目を迎えられました。振り返っていかがでしょう?
- 悔しい思いをした記憶が多いからか、すごく長かったなと感じるし濃い4年間だったと思います。
- 悔しい記憶が多いですか?
- 1年目は自分の思うプレーが全然できなかったし、リーグ戦も2位。2年目はケガをしてしまって。3年目は試合には出てたけど優勝争いもできず、タイトルも獲れずに終わってしまった。今年も、自分の中で1つの目標にしてたE-1(東アジアE-1サッカー選手権・国内組を中心に代表を選出)のメンバーに選ばれなかったですし、ACLE(AFCチャンピオンズリーグエリート)も準優勝で終わってしまったんで、やっぱり結構悔しい思いをしてきたと思います。
- 2年目は天皇杯タイトルを獲得しましたが、決勝はケガでメンバー外でした。
- 自分の中ではタイトルを獲った感覚はなかったですね。初戦から3試合は出てたので、いろんな人が「いや、獲ってるよ」って言ってくれたけど、決勝に出る出ないで達成感が全然違うと思います。ケガをしていなくても絶対的な選手ではなかったですし。だから優勝はしたけど悔しさも残る大会でした。
- E-1のお話も出ましたが、佐々木選手は加入1年目からずっとW杯が目標だとおっしゃっています。
- 来年の北中米W杯を目指している中で、これまで1度も代表に呼ばれてなくて。だから国内組から選出されるE-1にはなんとしてでも入って、そこでアピールしたいと思ってきました。なので選ばれなかったのは結構悔しかったですし、気持ち的にもちょっと落ちてしまってプレーもあまりうまくいかなくなって…あの頃は少し難しい時期ではありましたね。
- 悔しい思いをしながらも、佐々木選手はこうしてずっと自身の目標を言葉にし続けていらっしゃいますね。
- それは、目指してますから、本当に。言葉にしないと自分の中でも薄れちゃいそうだし、諦めたくないんで。あと、大学時代の監督にも細かく目標設定しろと言われていました。大学の先輩の守田さん(守田英正・日本代表)は大学時代から『何年後にワールドカップがあるから、それまでにこう活躍して、海外に行って活躍して代表に選ばれる』という目標を立てていた話もしてくれていて。自分も設定をした中で、今回のE-1にかけていた部分がありましたね。
- 次の目標設定はどこになりますか?
- もちろんまだW杯はあるので。今の代表メンバーはヨーロッパのトップで活躍しているすごい選手ばかりですけど、自分もまずはフロンターレでしっかり活躍して、代表を目指せる位置に行ければと思ってます。
- チームでは、本職の左SBだけではなくCBでの活躍が続いています。右SBでの起用もあり、そのユーティリティぶりはチームにとって貴重な存在です。
- 試合ごとにポジションが変わるのは自分の中ですごく難しさがありました。左右が変わると景色も身体の向きも変わって、自分の苦手な向きもある。それこそ、E-1のメンバーに入れなかった頃から毎試合違うポジションをやっていたんですけど、その頃は全然コンディションが上がらなかった。どこかでポジションが変わることを言い訳にしてたところがあったんですよね。その思いを1回なくそうって思えてから、だんだんいいプレーができるようになりました。
- その思いをなくせるものですか?
- 大学4年生の時、人がいなくてCBをやらされたと思ったことがあって。その時、僕は監督に「俺はフロンターレに行ってSBをやるからCBなんてやってらんないっす」って言ったんです。プロでSBをやるのにここで1年間CBをやりたくないって思いで。そしたら「ふざけんじゃねぇ」ってめっちゃ怒られて。「絶対いつかこの経験が役に立つから」と言われたんですけど、その時は分からなかった。でも今本当に役に立ってるな、と。だから今はいろんなポジションをやってるけどこれもいつか役に立つのかなって。それこそ代表に行った時、どこでもできることが自分の強みになるのかもと思えて。そこから良いメンタリティでやれていると思います。
- その経験を思い出して気付けた。
- そうです。今CBを自信を持ってやれているのは、やっぱり大学時代にCBを経験できたからだと思うし、あの時の監督の言葉がようやく分かりました。もちろんこの先、本職の左SBで勝負したい気持ちはありますけど、それより今はまずチームのためにプレーしていきたいです。
- チームのためにというと、今季は副キャプテンに就任されました。
- もっとやんなきゃいけないとか、声を出してもっともっと引っ張っていかないと、という自覚が強くなりました。
- 確かにすごく声を出されてますよね。
- 声を出すとめっちゃ集中できます。集中できてない時はふわふわしてるんですけど、アップ中やロッカーでも「入りから集中していこう!」と声を出したら、自分が集中する感覚が増してくるんです。声を出して周りを巻き込むのもそうですけど、自分自身の気持ちを高ぶらせる意味でもすごくいいことだと感じてます。
- ピッチでキャプテンマークを巻くことも増えました。
- 気持ちが全然違いますね。特にスタートから巻いた時は色々考えることも多くて、ちょっとストレスというか…自分はまだまだ、ちっぽけなんで。巻くと「自分が勝敗を握る」くらいの責任を感じるんです。こういうプレッシャーを、ヤスくん(脇坂泰斗・キャプテン)とか、ケントくん(橘田健人・前キャプテン)やショウゴさん(谷口彰悟・前々キャプテン)が毎試合背負ってたんだなって考えるとやっぱりすごい。だからこそ副キャプテンとして一緒に引っ張っていかなきゃって思ってます。
- 佐々木選手がチームを牽引する存在になってきていることを感じます。
- 自分も4年目ですし、引っ張っていく気持ちは強いです。あとはチームの良いところを継続していくことも必要だと思っていて。例えば、自分の加入1年目の頃に比べたら、練習中の緊張感みたいなものがだんだん薄れてきてると感じてるんです。あの時の練習の空気って、「ミスする奴が浮く」みたいなすごい緊張感があったんですよ。みんな上手すぎて、その中にいたら自分の足じゃないみたいな感覚になって、普段なら絶対通るパスもずれてしまうような…。そういう空気を作ってくれていた上の人たちが抜けていって、今は少し変わってきてしまってるかなと。そこはあの空気を知っている自分たちが、またやっていかないといけないところだと思っています。
- 今後に向けてもお願いします。
- 今年はまだタイトルを取れるチャンスはあります。なんとか「自分が中心となってタイトルを獲った!」って言い切れるようにしたいです。もちろん個人的な目標もあるので、そこに向けて、まずフロンターレでしっかり活躍して、もっと大きい選手になれるように頑張っていきたいです。
【佐々木旭】2000年1月26日生まれ 埼玉県川越市出身 DF クラブ公式プロフィール
流通経済大学を経て、2022年川崎フロンターレに加入。本職は左SBながら、右SB、CBと最終ラインをどこでも高いレベルでこなす万能DF。対人の強さ、ボール奪取能力に優れる一方、ドリブルで自ら持ち運ぶ、両足で精度の高いクロスを供給するなど攻守両面でチームを支えている。2025年8月31日、FC町田ゼルビア戦でJ1通算100試合出場を達成。フロンターレの主軸として今後さらなる活躍が期待されている。
9月20日のFC東京戦で、佐々木選手のJ1・100試合出場達成のセレモニーが行われました。立ち会ったのは、ご両親、お姉さん、妹さん。「家族みんなでなかなか集まれないし、この機会に一緒に写真を撮れたことがよかったです」と話してくれました。花束を贈呈したのは大学生の妹さん。本当に嬉しそうにニコニコしている姿が印象的でした。自慢のお兄ちゃんですよね! お父さんは子供の頃サッカーを指導してくれたコーチ。その影響で、お姉さんも妹さんもサッカーをしていたそう。
「社会人になって自分で稼ぐようになって、よく3人も大学まで行かせたなと思いますね。部費や寮費もかかるのに」と、今あらためてご両親のすごさを感じているそうです。「何も言わずずっと背中を押し続けてくれた両親にはすごく感謝をしている」と話してくれました。
ちなみに、最近の佐々木選手の趣味を聞いたところ、悩みに悩んで「まあ…強いて言うなら、ゴルフ」。三浦颯太選手と橘田健人選手とよく行くそうですが「自分だけスコアが悪くてつまんないんすよ」。なので「あんまり行きたくないんですけど、行きたいっていうからついて行くよ…」って感じなんだそうです(笑)。でも成長しているそうですので、いつか楽しくなりますように!(笑)