川崎フロンターレ スベンド ブローダーセン選手 川崎フロンターレ スベンド ブローダーセン選手

GK49 スベンド ブローダーセン

フロンターレのゴールマウスを守る責任を感じる

最初は日本でちょっとだけプレーするつもりでした

いつも流暢な日本語に驚かされます。来日5年目とはいえここまで上達されるのはすごいなと。
語学の勉強はかなり頑張りました。絶対にチームメイトと直接コミュニケーションが取りたいと思っていたので。GK(ゴールキーパー)として守備の声がけはとても大切ですし、選手同士の良い関係も作りたかった。何よりこの国でもっと人生を楽しむために、日本語を勉強することが必要だと思いました。
来日した当初、横浜FCのとき日本語は分からなかったんですか?
全然分かりません。ひらがなもカタカナも、もちろん漢字も全て通訳に頼っていました。
そこから日本語の授業を受けたり?
1週間に1回授業を受けて、他の日は毎日自分で数字や漢字を覚えたり。あとは漫画を読んだりアニメを見たり、歌を歌ったりして興味を持ちながら勉強を続けました。もちろん2023年に結婚した奥さんの存在も大きいです。
奥様は日本人ですよね。
そう、日本で知り合って結婚しました。私の知りたい言葉を教えてもらってます。ただ、奥さんとは英語で会話することも多いですけど。
日本語を理解してきても、公式の場で通訳をつけない外国籍選手は珍しいです。
(前所属の)ファジアーノ岡山までは通訳をつけてもらっていたのですが、フロンターレに加入する時はもう必要ないと自分で伝えました。今は自分で自分の言葉を伝えられると思っているので。これからもっともっと日本語を磨いていきたいと思っています。
来日前はドイツで7年ほどプレーされていました。もともと日本でプレーしたい気持ちはあったんですか?
いえ、その気持ちはなかったです。子どもの頃は、任天堂、ゴジラ、ポケモン、遊戯王とか日本の文化に興味を持つことはありましたけど、やっぱりサッカーはヨーロッパでやりたかったから。だけど、いま横浜F・マリノスにいる宮市亮選手とドイツ(FCザンクトパウリ)で6年間チームメイトだったのですが、ロッカーも隣で仲良くなっていろいろ話を聞いているうちに日本に行ってみたいと思うようになりました。
どんな話を聞いたんですか?
基本的にはサッカーの話です。環境やサポーターの話を聞いてもそこまでヨーロッパと差はないかもと感じました。ヨーロッパでは日本という国をみんなが尊敬してます。賢い人やめっちゃ親切な人が多いしご飯も美味しいしって。それで、じゃあ私は旅行ではなくサッカーをするために日本に行きたいと思うようになりました。
そこからもう5年目です。日本人の奥様と結婚もして、Jクラブも3チーム目で。こんなに長くいると思っていましたか?
全然思ってなかったです!ちょっとだけ日本でプレーするつもりでした。日本が自分に合うかどうかもわからなかったし、実際に良い国なのかもわからない。まずどんな感じか試したかったから、最初の契約期間を短くしました。だけど横浜FCに加入して数ヶ月で契約を延長することにしました。
すぐに日本が好きになったんですね。
横浜市はもちろん神奈川県の色々な場所を移動したり旅行したりして、もっと日本の違うところも見たいと思うようになりました。移籍した岡山も、中国地方も九州も素敵で四国も素晴らしかった。たぶん…今はもう私はドイツより、日本の土地のことのほうが詳しいと思います。ドイツでは自分の地元だけよく知ってるけど他の街はあまり知らなかった。でも今は日本のいろんな街の良い場所を知ってます。
ブローダーセン選手のGKとしての魅力のひとつはシュートストップです。特に至近距離からのシュートを止める場面を多く見ますが、瞬時にどう判断してるのでしょう?
いろんな状況がありますが、大事なのはシュートを打たれる前に相手のポジションを見ることです。どこから打とうとしているのかを見る。そこに自分のポジションを合わせるのですが、重要なのはそのタイミングで、自分がいつポジションに入るかです。
そしてちょうど相手が打つ時に(プレジャンプから)着地すると、そこですぐリアクションができます。でもちょっとでも遅れたら…例えばストライカーがシュートを打ったのに私はまだ飛んでると、着地が遅れて判断もできなくなる。だからこそ予測が大事です。それはいつも出来るわけでもないしとても難しい。だけど、それがたくさん出来たら難しいシュートも止められる可能性が高くなります。
体が勝手に反応するのではなく、予測して計算して、あのシュートストップが生まれているんですね。
はい、全部頭の中が先です。もちろんスピードとか技術は全部必要です。だけどポジショニング、タイミングという判断を間違えるとどんな技術もスピードも届かなくなりますよね。相手を見て予測する。トップレベルの選手を見ていると、GKもフィールドプレーヤーも頭を使っています。トップとそうじゃない選手の1番の違いは判断の早さなのです。
その判断のために、ある程度相手ストライカーの癖やデータを頭に入れてたり?
それは基本的に私はやらないです。私は自分の実力を信じてます。私はこれまでの29年間の人生でたくさんのストライカーを見てきました。私の頭の深くにはその見てきたものがあります。PKは別ですが、試合の流れの中ではいつも違う状況になるし、持っているデータ通りにはなりません。
大切なのは、冷静にその場面を全部しっかりと見ることです。そして何があっても驚かない。「急にボールが入ってきてシュートを打たれた」では反応することが難しい。でも「ここにボールが入ってくるよね。次にボールが入るのは多分ここで、相手のポジションはここにくるよね、オッケーオッケー、私は合わせるよ!」となれば反応できます。私は派手なビッグセーブはいらないと思ってます。
最後になりましたが、フロンターレに加入していかがですか?
どこに行っても本当にたくさんのサポーターが声をかけてくれます。このクラブがめっちゃ好きなんだと感じます。だからこそ、ゴールマウスを守る責任を感じてますし、いまはまだ理想的な守備ができていないことがすごく残念です。攻撃力はあるチームだから、なんとか守備を安定させたい。それができれば目標のタイトルに近づけると思ってます。でも今はまだまだ。私の仕事をしっかりやって、守備の選手と一緒に、いい守備の形を作っていきたいと思っています。
プロフィール

【スベンド ブローダーセン】1997年3月22日生まれ ドイツ・ハンブルグ出身 クラブ公式プロフィール
ブンデスリーガ・FCザンクトパウリのアカデミーで育ち、後にトップチームデビュー。2021年7月に来日し横浜FCに加入するとすぐにポジションを獲得し、正GKとして活躍した。2024年に移籍したファジアーノ岡山でもレギュラーを務め、J1昇格に大きく貢献。今季加入したフロンターレでも正GKの座を掴んでいる。的確なポジショニングと反応速度、ビルドアップ能力を兼ね備えたGKとして高く評価され、冷静な判断力と安定感でチームの守備を支える存在。U-20、U-21ドイツ代表。東京五輪ドイツ代表。

フリーアナウンサー 高木聖佳’s eye フリーアナウンサー 高木聖佳’s eye

長くJリーグのお仕事をしていますが、通訳なしの外国籍選手のインタビューは初めてでした。日本語を習得する難しさは周知のこと。自分の言葉で直接伝えたい、という思いでここまで努力できるブローダーセン選手の凄さを改めて感じました。一方で、文字起こししてみると「めっちゃ」という言葉が何度も登場してる…と気付きほっこり。インタビュー原稿には入りきりませんでしたが、川崎の街について印象を聞いた時の答えがこちらです。
「めっちゃ住みやすいです。めっちゃ子どもが多い、公園が多い、緑が多い、めっちゃ川も多い。あと道路も綺麗で、わたしは自転車に乗る時にそれを感じます。『こどもの国』にもよく行きます。でもあそここは川崎?ああ、違うの?横浜市?川崎はめっちゃ横に長いから、すぐ東京とか横浜に出てるよね(笑)」。
こんなふうにナチュラルに「めっちゃ」を使ってることが関西人としてめっちゃ嬉しかったです!(笑)そして確かに川崎を移動しているつもりが気づいたら横浜や東京にいることありますよね(笑)。お話ししていてとても楽しい時間でした!

⾼⽊聖佳
⾼⽊聖佳(X @takagikiyoka